はじめに
対象読者
目次
HTTP 402の歴史とx402の誕生
x402の6つの設計原則
アーキテクチャ
3つのコアコンポーネント
3つのアクター
決済フロー
Step 1: クライアントがリソースをリクエスト
Step 2: サーバーが402で支払い条件を返す
Step 3: クライアントが署名付き決済を送信
Step 4: サーバーが検証・決済・レスポンスを返す
ここまでの流れをシーケンス図にまとめると
対応ネットワークとアセット
EVMチェーン
Solana
Coinbaseホスト型Facilitator
サポートされるトランスポート
SDK・ライブラリ
TypeScript
その他の言語
AIエージェントとの連携
MCPとの統合
A2Aとの統合
x402 Foundation
まとめ
参考リンク
公式ソース
参考記事
この記事が参考になったら
https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/hanzochang.com/_v2/1772093613565_2w9nyjkiazy.png

x402とは? AIエージェント × MCP × 暗号資産が交差するHTTP自動決済プロトコル

HTTP 402を活用した決済プロトコル「x402」の入門ガイド。暗号資産(USDC)即時決済、AIエージェントによるMCP経由の自動購入、マルチチェーン対応まで、全体像を解説します。

公開日2026.02.26

更新日2026.02.26

CryptoAI

はじめに

Webの歴史には「未完成のステータスコード」があります。HTTP 402 Payment Required — 1990年代に定義されながら、30年以上にわたり「将来の使用のために予約」とされてきたステータスコードです。

2025年、Coinbaseがこのステータスコードをついに実用化しました。x402はHTTPの仕組みに決済を組み込むオープンプロトコルです。APIコールの中にステーブルコイン決済を埋め込むことで、アカウント作成もAPIキー管理も不要な、インターネットネイティブの支払いを実現します。

この記事では、x402の基本概念からアーキテクチャ、対応チェーン、AIエージェントとの連携まで、全体像を解説します。

対象読者

  • Web3やステーブルコイン決済に関心があるエンジニア
  • AIエージェントの自律的な決済フローに興味がある方
  • API収益化の新しい手法を探している方

目次

HTTP 402の歴史とx402の誕生

HTTP 402 Payment Requiredは、RFC 7231で定義されているHTTPステータスコードです。「将来の使用のために予約」とされたまま、具体的な仕様が策定されることなく放置されていました。

x402はこのステータスコードに命を吹き込みます。クライアントがリソースにアクセスしようとすると、サーバーが402 Payment Requiredを返し、支払い条件を提示します。クライアントが署名付きの支払いを添えてリクエストを再送すると、サーバーがブロックチェーン上で決済を実行し、リソースを返却します。

この仕組みにより、以下のような「インターネットの原罪」とも呼ばれる課題が解消されます。

  • アカウント登録・KYC不要
  • APIキーの事前発行不要
  • クレジットカード情報の入力不要
  • 即時決済(従来の数日ではなく数秒)

x402の6つの設計原則

x402は以下の原則に基づいて設計されています。

原則説明
オープン標準
誰でも自由にアクセスでき、特定の組織に依存しない
HTTPネイティブ
既存のHTTPインフラに自然に統合される
ネットワーク非依存
複数のブロックチェーンと通貨形式をサポート
後方互換性
セキュリティ上の正当な理由なく既存ネットワークのサポートを廃止しない
トラスト最小化
Facilitatorやサーバーがクライアントの意図外の資金移動を防止
ユーザーフレンドリー
ガス代やRPCの複雑さをクライアント・サーバーから抽象化

アーキテクチャ

x402のアーキテクチャは3つのコアコンポーネントと3つのアクターで構成されています。

3つのコアコンポーネント

  1. Types(型): PaymentRequirementsPaymentPayloadSettlementResponseなどのコアデータ構造。トランスポートや決済スキームに依存しない
  2. Logic(ロジック): 決済スキーム(exact、deferredなど)とネットワーク(EVM、Solanaなど)に依存する決済の構築・検証ロジック
  3. Representation(表現): トランスポート層(HTTP、MCP、A2Aなど)に依存するデータの伝送方法

3つのアクター

アクター役割
Client(クライアント)
リソースにアクセスしたいエンティティ。AIエージェントやアプリケーション
Resource Server(リソースサーバー)
APIやコンテンツを提供するHTTPサーバー
Facilitator(ファシリテーター)
決済の検証とブロックチェーン上での決済実行を担うサーバー

Facilitatorは決済処理の複雑さを引き受ける重要な存在です。リソースサーバーはブロックチェーンの知識を持つ必要がなく、Facilitatorの/verify/settleエンドポイントを呼ぶだけで決済を完了できます。

決済フロー

x402の決済フローは以下の4ステップです。

x402決済フロー全体像

Step 1: クライアントがリソースをリクエスト

GET /premium-data HTTP/1.1
Host: api.example.com

Step 2: サーバーが402で支払い条件を返す

サーバーは402 Payment Requiredステータスとともに、PAYMENT-REQUIREDヘッダーで支払い条件をBase64エンコードして返します。

HTTP/1.1 402 Payment Required
PAYMENT-REQUIRED: <Base64エンコードされたPaymentRequired>

デコードすると以下のようなJSONになります。

{
  "x402Version": 2,
  "error": "PAYMENT-SIGNATURE header is required",
  "resource": {
    "url": "https://api.example.com/premium-data",
    "description": "Access to premium market data",
    "mimeType": "application/json"
  },
  "accepts": [
    {
      "scheme": "exact",
      "network": "eip155:8453",
      "amount": "10000",
      "asset": "0x833589fCD6eDb6E08f4c7C32D4f71b54bdA02913",
      "payTo": "0x209693Bc6afc0C5328bA36FaF03C514EF312287C",
      "maxTimeoutSeconds": 60,
      "extra": { "name": "USDC", "version": "2" }
    }
  ]
}

Step 3: クライアントが署名付き決済を送信

クライアントはPAYMENT-SIGNATUREヘッダーに署名付きのPaymentPayloadをBase64エンコードして添付し、リクエストを再送します。

GET /premium-data HTTP/1.1
Host: api.example.com
PAYMENT-SIGNATURE: <Base64エンコードされたPaymentPayload>

Step 4: サーバーが検証・決済・レスポンスを返す

サーバーはFacilitatorの/verify/settleを順に呼び出し、ブロックチェーン上でトランザクションを実行します。成功すると200 OKとともにPAYMENT-RESPONSEヘッダーで決済結果を返します。

HTTP/1.1 200 OK
PAYMENT-RESPONSE: <Base64エンコードされたSettlementResponse>

ここまでの流れをシーケンス図にまとめると

Step 1〜4の流れを、Client・Resource Server・Facilitator・Blockchainの4者間のやり取りとして時系列で整理したものが以下のシーケンス図です。各ステップがどのタイミングで、誰から誰へ何が送られるかを俯瞰できます。

x402 決済シーケンス図
クリックで拡大

対応ネットワークとアセット

x402はV2仕様でCAIP-2(Chain Agnostic Improvement Proposal)形式のネットワーク識別子を採用しています。

EVMチェーン

ネットワークCAIP-2識別子Chain ID
Base メインネット
eip155:8453
8453
Base Sepolia(テスト)
eip155:84532
84532
Avalanche メインネット
eip155:43114
43114
Avalanche Fuji(テスト)
eip155:43113
43113

EVMではEIP-3009(Transfer with Authorization)に対応したERC-20トークンが利用可能です。現時点ではUSDCが主なサポート対象です。

Solana

ネットワークCAIP-2識別子
Solana メインネット
solana:5eykt4UsFv8P8NJdTREpY1vzqKqZKvdp
Solana Devnet(テスト)
solana:EtWTRABZaYq6iMfeYKouRu166VU2xqa1

SolanaではSPLトークンおよびToken-2022プログラムのトークンが利用可能です。

Coinbaseホスト型Facilitator

Coinbaseが提供するホスト型Facilitatorは、BaseとSolanaの両方をサポートしています。月間1,000トランザクションまで無料、以降は1トランザクションあたり$0.001です。

サポートされるトランスポート

x402はトランスポート非依存の設計で、現在以下のトランスポートが仕様化されています。

トランスポート用途
HTTP
Web API、RESTサービス(Express.js、Hono、Next.js、FastAPI)
MCP
AIエージェントのツール・リソース(Model Context Protocol)
A2A
エージェント間直接通信(Agent-to-Agent Protocol)

HTTPトランスポートが最も成熟しており、サーバーサイドのミドルウェアとして数行で統合できます。

SDK・ライブラリ

x402は複数の言語でSDKを提供しています。

TypeScript

パッケージ用途リンク
@x402/core
コアプロトコル
@x402/evm
EVM(Base、Avalancheなど)対応
@x402/svm
Solana対応
@x402/fetch
Fetchクライアントラッパー
@x402/axios
Axiosクライアントラッパー
@x402/express
Expressミドルウェア
@x402/hono
Honoミドルウェア
@x402/next
Next.js統合
@x402/paywall
ペイウォール

その他の言語

AIエージェントとの連携

x402がとりわけ注目を集めている理由は、AIエージェントによる自律的な決済を可能にする点です。

AIエージェントはAPIを呼び出す過程で402レスポンスを受け取ると、自動的に決済を行い、リソースにアクセスできます。アカウント作成やAPIキーの取得といった人間の介入が不要なため、エージェント間の経済活動がシームレスに実現します。

AIエージェント × x402 ユースケース

x402がサポートするユースケースは以下の通りです。

  • 自動決済処理: リソースアクセス時の支払いを自動化
  • リソースディスカバリ: Facilitatorサービス経由で利用可能なリソースを発見
  • 予算管理: 支出制御(実装依存)
  • マルチトランスポート: HTTP、MCP、A2Aを横断した決済

MCPとの統合

MCP(Model Context Protocol)トランスポートにより、Claude CodeやCursorといったAIツールのツール呼び出しの中にx402決済を組み込むことができます。

MCP x402 連携フロー
クリックで拡大

A2Aとの統合

A2A(Agent-to-Agent)トランスポートにより、エージェント同士が直接決済を行う仕組みが実現されます。

A2A x402 エージェント間決済
クリックで拡大

x402 Foundation

2025年末、CoinbaseとCloudflareはx402 Foundationの設立を発表しました。Foundationはx402の標準化、ツーリング、エッジプロバイダーやエージェントSDK全体での普及推進を担います。

Cloudflare Workersとの統合により、エッジでx402ペイウォールを展開できる仕組みが整備されています。

まとめ

x402は、HTTPに決済を組み込むというシンプルなアイデアを、実用的なプロトコルとして具体化したものです。

  • HTTP 402ステータスコードを活用したネイティブ決済
  • Base、Solana、Avalancheなど複数チェーンに対応
  • ステーブルコイン(USDC)による即時決済
  • AIエージェントによる自律的な支払いに最適
  • HTTP、MCP、A2Aなど複数のトランスポートをサポート
  • Coinbaseホスト型Facilitatorで月1,000txまで無料

x402.orgの統計によれば、プロトコルはすでに7,500万件以上のトランザクションを処理し、$24M以上のボリュームを記録しています。

参考リンク

公式ソース

参考記事

この記事が参考になったら

X (Twitter)Xをフォローする株式会社hanzochangお問い合わせフォーム
picture
hanzochang - 半澤勇大
慶應義塾大学卒業後、Webプランナーとして勤務。 ナショナルクライアントのキャンペーンサイトの企画・演出を担当。 その後開発会社に創業メンバーとして参加。 Fintech案件や大手企業のDXプロジェクトに関わり、その後個人事業主として独立し、 2023年にWeb3に特化した開発会社として法人化しました。 現在はWeb3アプリ開発を中心にAI開発フローの整備を行っています。
また、趣味で2017年ごろより匿名アカウントでCryptoの調査等を行い、 ブロックチェーンメディアやSNSでビットコイン論文等の図解等を発信していました。
X (Twitter)

最新の記事

x402 × Solana実装ガイド | 支払い対応MCPサーバーをTypeScriptで構築する

x402 × Solana実装ガイド | 支払い対応MCPサーバーをTypeScriptで構築する

x402 V2プロトコルのSolana実装を徹底解説。SVM exact schemeの仕組みから、@x402/mcpパッケージを使った支払い対応MCPサーバーの構築まで、実際のコードとともにステップバイステップで解説します。

x402 V2 解説 | Solana等マルチチェーン対応・OpenClawの自動売買にも利用されるHTTP決済プロトコル

x402 V2 解説 | Solana等マルチチェーン対応・OpenClawの自動売買にも利用されるHTTP決済プロトコル

累計$600M超のボリュームを記録するHTTP決済プロトコルx402がV2で大幅進化。Solana等のマルチチェーン対応、Extensions拡張機構、Discovery APIを解説。OpenClaw FoundryやClawRouterなどAIエージェントの自動売買での採用事例も紹介します。

ClaudeCode スマホでリモート接続 - OpenClawはもう不要?! RemoteControlを使おう

ClaudeCode スマホでリモート接続 - OpenClawはもう不要?! RemoteControlを使おう

Claude Code Remote Controlを使えば、PCで動作中のセッションをスマホやタブレットからそのまま操作できます。QRコード接続、セキュリティ設定、トラブルシューティングまで解説します。

OpenClaw × Solana 事例まとめ - 公式スキル・周辺プロダクト・使いどころ

OpenClaw × Solana 事例まとめ - 公式スキル・周辺プロダクト・使いどころ

OpenClawとSolanaが交わる実例(公式スキル、周辺プラグイン、取引・監視系プロジェクト、ハッカソン)を一次ソースのリンク付きで一覧にまとめます。

OpenClaw APIトークン節約 - Happy + Claude Codeで出先から開発・指示出し

OpenClaw APIトークン節約 - Happy + Claude Codeで出先から開発・指示出し

Happyのプロセス切断をOpenClawで復帰させ、出先からいつでもClaude Code / Codexにリモートアクセスする方法を解説。APIトークンの節約と、スマホ1台で完結するAI開発ワークフローを紹介します。

FDE(Forward Deployed Engineering)とは - 中小企業のAI導入で活きる場面

FDE(Forward Deployed Engineering)とは - 中小企業のAI導入で活きる場面

FDE(Forward Deployed Engineering)はPalantirが体系化した顧客現場型エンジニアリング手法です。中小企業のAI導入においてFDEが活きる具体的な場面と、従来のSIer・コンサル・SaaSとの違いを解説します。