
FDE(Forward Deployed Engineering)とは - 中小企業のAI導入で活きる場面
FDE(Forward Deployed Engineering)はPalantirが体系化した顧客現場型エンジニアリング手法です。中小企業のAI導入においてFDEが活きる具体的な場面と、従来のSIer・コンサル・SaaSとの違いを解説します。
公開日2026.02.16
更新日2026.02.16
はじめに
「ChatGPTは触った。でも、自社の業務は何も変わっていない」
2025年以降、この悩みを抱える中小企業が増えています。AIツールは揃っている。足りないのは「御社の業務を理解し、どこにAIを使うか設計し、実装できる人間」です。
シリコンバレーでは、この課題を解決するアプローチとして**FDE(Forward Deployed Engineering)**というモデルが広がっています。この記事では、FDEの概念と、中小企業のAI導入において活きる場面を解説します。
対象読者
- AI導入を検討しているが、何から始めればいいかわからない中小企業の方
- SIerやコンサルに依頼するか迷っている方
- FDEという言葉を聞いたことがあるが、具体的に何かわからない方
目次
目次
FDEとは何か
FDE(Forward Deployed Engineering)は、「顧客の現場に入り、業務を理解し、動くものを作る」エンジニアリング手法です。
Palantir Technologiesが体系化し、その後OpenAI(ChatGPT Enterpriseの企業実装)やSHIFT(東証プライム上場、「アドバンスドFDE」サービス)など多くの企業が採用しています。
従来の開発モデルとの違い
| 項目 | SIer / 受託開発 | コンサルティング | SaaS導入 | FDE |
|---|---|---|---|---|
業務理解 | ヒアリング→要件定義 | 分析→提案書 | マニュアル通り | 現場に入って体験 |
初回成果物 | 数ヶ月後 | 報告書 | 即日(汎用) | 1〜2週間でプロトタイプ |
カスタマイズ | 仕様書ベースで追加費用 | 提案のみ | 設定範囲内 | 業務に合わせて随時調整 |
技術選定 | 自社製品 or 得意な技術 | ベンダー推薦 | 自社プロダクト | プロダクトに縛られず最適を選定 |
運用移管 | 保守契約 | なし | サポート窓口 | 社内で回せる状態にして渡す |
FDEの本質は「プロダクトを売る」のではなく「課題を解く」ことにあります。特定のツールやプラットフォームに依存しないため、業務に最も適したAIやツールを選定できます。
なぜ中小企業にFDEが必要か
大企業との構造的な違い
大企業にはIT部門やDX推進室があり、AI導入の意思決定から実装まで社内で回せます。しかし中小企業では、IT専任者がいないケースがほとんどです。
その結果、AI導入は以下のパターンに陥りがちです。
- SaaSを契約したが使いこなせない — 汎用ツールは御社の業務に合わせてくれない
- コンサルに依頼したが提案書だけ残った — 「何をすべきか」はわかったが「誰が作るか」がいない
- SIerに依頼したら見積もりが数百万円 — 中小企業の予算感と合わない
FDEはこの3つのギャップを埋めます。現場に入り、業務を理解し、最速で動くものを作り、社内で運用できる状態にして渡す。
大企業向けFDEとの違い
Palantir、OpenAI、SHIFTのFDEは主に大企業向けです。多くの場合、自社プロダクト(Palantir Foundry、ChatGPT Enterprise等)の導入・定着が前提となっています。
中小企業向けのFDEでは、以下が異なります。
- プロダクト中立 — Claude、OpenAI、Google等のAI技術から御社に最適なものを選定
- 小さく始める — 月額数百万円の契約ではなく、1つの業務課題から着手
- 自走を目指す — 永続的な保守契約ではなく、社内で運用できる状態をゴールにする
FDEが活きる具体的な場面
場面1: 「何をAI化すべきかわからない」
最もFDEが活きる場面です。AI導入で最も難しいのは技術選定ではなく、「どの業務に使うか」の特定です。
FDEは現場に入り、実際の業務フローを観察します。社員が日常的に行っている作業の中から、AIが効果を発揮するポイントを見つけ出します。
例えば、ある製造業では「検品報告書の作成」に毎日2時間かかっていました。これをAIで自動化した結果、作業時間は15分に短縮されました。この「検品報告書がボトルネックだ」という発見は、現場を見なければできません。
場面2: 「SaaSを契約したが定着しない」
よくあるケースです。チャットボットを導入したが誰も使わない。議事録ツールを入れたが手動のままのほうが早い。
原因はほとんどの場合、ツールの問題ではなく「業務フローにツールが組み込まれていない」ことです。FDEは既存の業務フローを理解した上で、ツールがフローに溶け込む形で再設計します。
場面3: 「データはあるが活用できていない」
Excelに蓄積された数年分の売上データ、紙で管理している顧客情報、メールに散在する問い合わせ履歴。中小企業にはデータがあります。しかし、それを活用する仕組みがありません。
FDEは既存データをAIが扱える形に整理し、分析や自動化のパイプラインを構築します。新しいシステムを一から作るのではなく、今あるものを活かすアプローチです。
場面4: 「属人化した業務を標準化したい」
「Aさんしかできない業務」が中小企業には多く存在します。Aさんが休むと業務が止まる。引き継ぎもできない。
FDEは属人化した業務の手順をAIアシスタントとして再構築します。Aさんの判断基準をLLMに学習させ、他の社員でも同等の判断ができるようにする。属人化の解消とAI導入を同時に実現できます。
場面5: 「AIエージェントを業務に組み込みたい」
Discord、Slack、LINEなど社内で使っているメッセージングツールにAIエージェントを接続し、自然言語で業務を指示できる環境を構築する。これもFDEの領域です。
例えば、Slackで「先月の売上レポートを出して」と指示すると、AIが社内データベースにアクセスしてレポートを自動生成する。このような仕組みは、業務フローを理解したエンジニアでなければ設計できません。
FDEの進め方
ステップ1: 業務を見てから設計する
「AIで何をすべきか」は、業務を見ないとわかりません。ヒアリングで業務フローを整理し、AIが効果を発揮するポイントを特定します。汎用ツールの紹介ではなく、御社だけの活用設計をつくります。
ステップ2: 1〜2週間で動くものを見せる
半年かけて要件定義、ということはしません。最短1週間でプロトタイプを構築し、実際に業務で試していただきます。「違う」と思えばすぐ修正。FDEの本質は、このスピードです。
ステップ3: 社内で運用できる状態にして渡す
「エンジニアがいなくなったら使えない」にはしません。操作マニュアル、運用ルール、社内担当者へのレクチャーまで含めて納品。AIを「御社の当たり前」にすることがゴールです。
まとめ
FDE(Forward Deployed Engineering)は、Palantirが体系化し、OpenAIやSHIFTが採用している顧客現場型エンジニアリング手法です。
- 現場に入り、業務を観察してからAI化のポイントを特定する
- 1〜2週間で動くプロトタイプを作り、フィードバックを受けて調整する
- 社内で自走できる状態にして納品する
「ChatGPTは触ったけど業務は変わらない」という状態を脱するには、ツールの問題ではなく「落とし込む人」が必要です。FDEはその役割を担うアプローチです。
中小企業においては、大企業向けFDEのようにプロダクトに縛られない形で、小さく始めて自走を目指すモデルが有効です。
参考リンク
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